「藝術と環境のねじれ 日本画の景色観としての盆景性」早川 陽
〜引用〜
”熊谷守一は最晩年のNHKのインタビューで、絵について「結局はね、何を見せるかということでしょ」と話し始め、さらに「下手も絵のうち」という彼が晩年によく口にした言葉について「下手といえばね、上手なんてものは、先が見えちまいますわ。行き先もちゃんと、わかってますわね。下手なのはどうなるかわからない。スケールが大きいですわね。上手な人よりスケールが大きい」と答えている。これは文人の描く絵は職業画家としての絵ではなく、余技としての絵であることを背景に持った発言であり、下手の内に画の自由さと本質が隠れていることを示している。
〜中略〜最晩年のインタビューは洋画家でありながら、書や南画に親しんだ守一が精神的に山水世界のスケール観を自由に見出していたことを物語っている。”